住宅ローンの返済が厳しくなった時

マンション管理人の講師をしていた時、授業中に、「住宅ローンが返せなかったときは、借金を踏み倒しても大丈夫です。」と、威勢の良いことを言ったことがありました。すると生徒の一人が授業終了後、私のところに来て「先生、ちょっとご相談あるのですが?」とのことでしたので、後日会社でお話を伺うことになりました。

その方は59歳で定年を間近に控え、住宅ローンの返済が厳しく、今後どうしたらよいでしょうか、という深刻な状況でした。

マンションを買ったのは、平成の始め、まさにバブルの時期。金額は5,000万円。25年返済を続けてきたが、まだ借金が1,500万円ほど、ということです。今までは自分の給料で何とか返してきたけれど、定年になって給料も減ると、返済していくのは無理とのこと。マンションは売っても800万円くらいで、借金を全額返せず、足りない分を支払うのも不可能ということでした。

私からの質問は、

  1. 借金は踏み倒しても良いけれど、その他に財産ありますか?
  2. ご家族の反対はないですか?
  3. 場合によっては、自己破産してもいいですか?

といった質問でした。彼の回答は、

「どれも問題なく、マンションもいらないので、何とか片付けてほしい、」ということでした。

覚悟を決めて頂いたので、アドバイスを具体的にしました。

まず、マンションの管理費・修繕積立金の支払いはやめました。滞納した分については、所有権が移ったあと、新しい所有者が支払います。その分、売買価格は下がりますが、もはや関係ありません。

住宅ローンの返済も当然、止めました。住宅金融公庫(住宅支援機構)の借入で民間の金融機関が窓口になっているものです。

金融機関にとって、滞納する人への対応は全てマニュアル化されているので、機械的に処理されていきます。当初3カ月ほどは、はがき等が来て、返済してください、という感じです。3か月を過ぎると、回収専門の部署に管理が移り、もう少し厳しめの手紙になります。

このまま滞納が続くと、競売でマンションが売られてしまいますよ、といった内容です。その部署で3カ月ほどが経つと、さらに次の専門の部署に移ります。そちらの部署まで行くと、もはや返済してください、というよりは、本当に競売します、といった内容になります。

3段階目まで来たあたりで、こちらから担当者に連絡をします。「マンションを任意に売却して、なるべく多く返しますが、不足分はごめんなさい。」金融機関の担当者にとっては、回収する金額の多寡は関係ありません。
スムーズに売却が終わって、ある程度回収すればそこで業務終了です。

競売は手間も時間もかかるので、任意に売却するというと、とても喜びます。残った債権(借りた人からすれば、借金の残り)については、債権回収会社に売り飛ばして終わりです。この段階でも、「毎月何千円でもよいから返済してください」とか言われますが、無い袖は振れない。返せません。とつっぱねていれば、そのうち向こうがあきらめます。

金融機関がつぶれることはなく、経営がヤバクなったら国が救済してきました。過去に不良債権処理に巨額の資金が投入されたことを覚えている方は多いと思います。

個々の方は、住宅ローンの返済が滞ったくらいで、焦って必死に資金繰りすることはありません。もちろん、努力して返済できるのでしたら、返済したほうが良いに決まっていますが、いよいよ困ったら、自分や家族の幸せが一番大事です。金融機関に返済するために、親兄弟、友人、親戚から借金をしまくると、その後、一番大事な回りの人はもう助けてくれません。

そんな状況になるくらいなら、金融機関に不義理をしても、誰からも叱られることはありません。ローンのことで困ったら、ぜひご一報願います。的確なアドバイスをさせて頂きます。

コメント

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です